制作期間 2026 年 10 月 26 日~ 10 月 30 日
使用ソフト Blender 5.2 / BlenderMCP / Claude Opus 5.5 (エフォート中) / Graswald
尺 約 3 分 (31 カット / 169 秒)
Blender MCP と Claude Opus 5.5、エフォート中だけでフル 3DCG の映像制作を試みました。
デザイン画からメインキャラをモデリングするのはもちろん、リギング、アニメーション、環境デザイン、小物制作、レンダリングのセットアップ、ポスト処理、SE・BGMまで、全部 Opus がやっています。
正直、ここまでできるとは驚きでした。
Opus は Claude のいちばん安いプランでも使えます。つまり、かなり敷居が低く、ほぼ誰でもこれができるということです。
全部 Opus がやっている
モデリングでは、プロポーションが違う!と指示しただけで、人間と同じようにパース絵から輪郭を抽出して View に投影し、プロポーションを合わせてくれました。細部を作るときは拡大してデザイン画と見比べ、影の出方まで参考にしながら形状を詰めてくれました。影のシルエットを元に修正なんてできるのかなと半信半疑でしたが結構やってくれます。
LowPoly でモデリングしてサブディビジョンでなめらかにしますし、人間がやるのと同じように Rig も組みます。そしてその Rig を使ってアニメーションもつけてくれます。
ワクワクするストーリーも提案してくれますし、それを文字コンテに起こすところまでやってくれます。ビデオコンテを見ながら、カメラアングルや主人公の動きに注文をつけることもできます。
ビデオコンテを見ながらあーでもないこーでもないといろんなカメラアングルや動きを試して作っていました。 さながら監督ですね!



ECHO ってどんな話?
人類が去った後の世界で、四脚の調査ロボット・エコー (ECHO-21) が遺跡に残された人の痕跡を記録していくうちに、記録できない何かを抱えはじめる……という、台詞なしの約 3 分の短編です。
物語は 4 つの感情を順にたどります。
- 喜び — 壁の落書きと、残された玩具
- 愛情 — 手を重ねた浮彫り
- 悲しみ — 墓標と枯れた花
- 畏敬 — 観測台と星空
そしてラストで、エコーは「記録ではない絵」を描きます。


規模感
| 項目 | 数 |
|---|---|
| カット | 31 (+ C30 の別案) |
| セット | 5 (門・広間・回廊・墓標・観測台) |
| 生成・制御用の Python スクリプト | 約 70 本 |
| アニマティックの版 | v2〜v9 (約 10 時間で 8 回更新) |
| 確認用の静止画 | 約 270 枚 |
| 本番レンダー | 720p・32 サンプルで約 4,200 フレーム、通しでレンダリングして10時間ぐらい? |
構想は 10/26、ティーザーとアニマティックは 10/27〜28 計3日ぐらいでしょうか。 合間合間で指示をする感じなので実働はもっと少ないです。
人を出さずに感情を描く
キャラクター制作でいちばん大変なのは、人の顔と芝居です。なので最初に「人間は一切出さない」と決めていました。主人公はロボットというのだけ決めていましたが、感情表現の仕方はOpusに提案してもらったものそのままです。感情は次の 4 つだけで表現します。
- 目の色
- レンズの絞り
- 首の角度
- 歩き方
腕も足さないし、顔も作りません。制約を先に置いて、そこから物語を逆算して作ってもらった感じです。というと偉そうに聞こえますが、まぁこの辺は自分で作品を作る時も同じですね。不気味の谷を越えるのは大変なので…

進め方
| # | フェーズ | 主な成果物 |
|---|---|---|
| 1 | 企画 | ログライン、感情 4 段構成、文字コンテ (31 カット) |
| 2 | パイプライン設計 | フォルダ構成 (assets / shots / renders / edit) |
| 3 | 機体モデリング | 機体のマスターファイル、パーツ一覧 |
| 4 | リグ | CTRL ボーン + 感情プロパティ |
| 5 | セット・植生 | 門 / 広間 / 回廊 / 墓標 / 観測台 |
| 6 | ティーザー | 3 カットの Eevee プレビュー (18 秒) |
| 7 | 全カットのレイアウト | C1〜C31、アニマティック v2〜v9 |
| 8 | 本番レンダー | 720p 連番 → mp4 |
| 9 | 編集・音 | これから! |
ルールは 3 つだけです。
- キャラクターモデリング (デザイン画に寄せた外装) を固めてからアニメに移る
- キャラクターがある程度できたらビデオコンテを作る
- 全カットをレイアウトで一度通してから、カットごとに詰める
最初のティーザーは C3・C4・C26 の 3 カットだけ。まず「そもそも絵になるのか?」を確かめます。

手で触らない制作
全部スクリプトから作り直せる
モデル、リグ、セット、ショット、HUD、タイトルまで、ほぼすべてが Python スクリプトから作り直せるようになっています。
echo_build_all.pyが機体を組み、最後にecho_rig.pyがリグを作り直す (既存のアクションは引き継ぐ)echo_cuts.pyが各カットのショットファイルを生成する
という具合。フィードバックで脚の関節を変えても、全 31 カットを作り直せばそのまま反映されます。AI との共同作業では、再現できる手順そのものが成果物 なんだなと感じました。
Maya / 3ds Max のやり方を Blender で

| Maya / 3ds Max | Blender |
|---|---|
| リファレンス | リンク (Link) |
| リファレンスしたリグにアニメ | ライブラリオーバーライド |
| シーンファイル | ショットファイル (.blend) |
いわゆるちゃんとした?参照ベースのプロジェクト構成になっているのでキャラクターファイルを変更すれば全カットに適用されますし、セットを変更すればこれもまた使われる全カットに反映されます(レンダリングさえし直せば

- 感情パラメータ (eye_color / eye_glow / iris / power) はリグのカスタムプロパティにまとめて、Library Overridable にしておきます。これを忘れるとショット側でアニメーションできません
- パスは相対パスに。フォルダごと別マシンに移しても壊れません
- リンクした中身はショット側で直さず、元のアセットを直してリロードします
- 出力は動画ではなく連番画像に。途中で落ちても再開できます
モデリング
放っておくと、形はすぐ球や箱の組み合わせになって、デザイン画から離れていきます。なのでデザイン画 (正面・側面・背面・上面) を部位ごとに拡大して、形に分解して合わせてもらいました。
プロポーションを合わせてと指示しただけで、デザイン画の輪郭を描き込んだテクスチャを用意してカメラ背景に敷き始めたときには、さすがにビビりましたね。

パーツ一覧表なるものが作られて、部位ごとに構成要素 (形・色・素材) と照合した回数が記録されていたようです。たとえば前脚のすねなら「正面は盾形、上端に V 字の切り欠き、青」といった具合に。

LowPoly ケージ方式
パネルラインを別パーツで足すと、形状を直したときについてきません。ベベルのクランプで溝の幅が潰れることもありました。
そこで、曲面上に粗い格子を作り、溝やライトは「線」ではなく「帯」としてナイフで切ってからサブディビジョンをかける方式 に切り替えてもらいました。パネルラインまで含めて 1 枚のメッシュなので、形状を直してもちゃんと追従します。
細部は 3 段階で足しています。
- 大きな形
- パネル・ライト
- ネジ・ベント・ラベル


関節は先に軸を決める
- 足首と脚の付け根以外は 1 軸ヒンジ。回転軸 (位置・向き) を先に決めます
- 関節まわりの外装は、軸と同心の円弧・フォーク・カップ形状で作ります (部品を突き刺さない)
- 可動域いっぱいまで回して、めり込まないのを確かめてから次へ
- 頭は胸と別部品にして単独で回せるように (演出上これは必須)。首の可動範囲に合わせて胴体側の受け皿も彫りました


リグとアニメーション
腕は足していないので、壁を叩く・触れる・描く・玩具をしまうといった芝居は全部前脚でこなしてもらう必要がありますがIKだけでは限界がありました。そこで以下のような工夫をしてもらってます。
- 前脚は IK を使わず、解析的に解いた FK を焼き込む (IK だと足が滑る)
- 足先を狙った点に当てる補正
デザイン構造上難しい動きは演出で回避します。前脚の先は自分のレンズに届きません。なので C11 は「レンズに触れる」をやめて、「目の前に掲げて見つめる」に演出を変えました。

絵作り

目の色
| 状態 | 色 |
|---|---|
| 平常 | 青 |
| 喜び | オレンジ |
| 悲しみ | 暗い紫 |
| 畏敬 | 白 |
| ラスト (C30) | 新しい色 (ピンク寄り) |
目はじわっと明るくするのではなく、蛍光灯みたいにちらつきながら点く ようにしています。レンズフレアとブルームは強め。C26 では目の変化が画面上で小さく見えたので、さらに強調しました。

HUD
主観ショットでは HUD を出して、「記録する機械」の目線を見せています。遺跡の柱をスキャンすると「STRUCT ARTIFICIAL / MAT GRANITE / EST.AGE >2,000 Y」と出る、みたいな感じです。モードによって表示も変わって、下の画像は MODE REPAIR で、修理対象が赤い枠で「INTEG 0% / TARGET LOST」と出ています。

HUD は別シーンでレンダーして、コンポジットで重ねてもらっています。本編のレンダーにグレアを 6 系統かけて加算し、色調整。そこに HUD をアルファオーバーで重ね、HUD のアルファをぼかしたもので下地を少し暗くして文字を読みやすくしています。最後に HUD のにじみ、樽型歪み+色収差、周辺減光でレンズ越しっぽさを足して完成です。

セット
セットは門・広間・回廊・墓標・観測台の 5 つ。 各カットのショットファイルには、セット (SET_)、環境 (ENV_) をリンクで読み込み、そこにエコー (CHAR_echo) とカメラ (CAM_) を置いている構成です。アウトライナーを見るとそのまま分かりますね。


霧の濃さもセットごとに 2 案ずつ並べて見比べ、決めていたりします。

植生
植生には Graswald を使いました。ただ、Graswald Pro 1.3.16 は Blender 5.2 で動かない模様です (古い文脈オーバーライド API を使っているため)。なのでモデルとマテリアルだけ借りて、散布は自作の Geometry Nodes で組んでもらってます。
- いちばん重かったのは Moss 1だったそうな。1 個約 1.5 万頂点 × 約 1.1 万個で、なんと約 1.7 億頂点。Decimate 0.1 で約 4,500 万頂点まで減らしてくれました。
- 草の揺れは簡易的なもので誤魔化す方針で進めました。「各株を自分の根元を軸に回す」ようにしてもらってます。


レイアウトからアニマティックへ
全カットを粗く通してから詰める方針で、アニマティックは v2 から v9 まで、約 10 時間で 8 回更新していたようです。そのままだと演出上の意図が分かりづらい部分も何カットかあり、全然別演出になったものもあります。


レンダリング — Mac では無理なので Windows 機に任せる
1080p の Cycles だと、門のセットで 1 枚数分かかる見込みでした。1080p と 720p を見比べたら差が小さかったので、720p・32 サンプル・OIDN (アルベド + 法線) でいくことに。
| セット | 1 枚あたり (RTX 4060 Ti) |
|---|---|
| 植生の多いセット | 約 13 秒 |
| 夜の観測台 | 約 5 秒 |
作業は Mac で、本番レンダーは別の Windows 機でバックグラウンド実行です。受け渡しは GitHub 経由で行っています。
- 本番設定はショットファイルを書き換えず、レンダー時のコマンドライン引数で上書きします (
--preview/--hd/--fast) - レンダー前に点検スクリプト (リンク切れ・フォント欠け・尺・カメラ) を流します
- HUD のフォントは .blend に埋め込んでおけば、別マシンでもそのまま出ます
Tips
Blender / パイプライン
- 長い処理はタイマー (
persistent=True) で回す。MCP 経由の 1 回の呼び出しで重い処理を抱えないのがコツ。 - 確認用ツールを先に作る。
echo_chk.pyは静止画の撮影、めり込み検出、カメラとロボットの距離の計測、パラメータを振っての計測ができます。AI が「見て判断する」ための材料になります。 - Eevee プレビューは INVOKE で走らせると Esc で止められます。スクリプトからは
render.view_cancel libraries.loadに渡すリストはlist()でコピーしてから渡す- 小道具を前脚で持たせるときは、足のキーを全部打ってから attach。離した後の位置はキーで固定。
- 歩行時の体の高さ・傾きは前後 ±(cycle × 0.6) フレームでならすと違和感が減りそうでした。地面の凹凸は足で吸収するイメージですね。まぁこの辺はどちらかというとRigの話ですが。
- 地面の高さはセットの地面メッシュにレイを飛ばして関数にし、足の接地に活用してもらうなど。
AI との協働
- 決めたことはその場でドキュメントにしてもらうのが良いですね (リグ仕様、HUD 仕様、レンダー手順、ティーザーメモ)。これは映像制作に限らず鉄板。
- アニメーションまわりは、まだまだめり込みとか動きの不自然さを人側から指摘しないといけなそうだなという学びを得ました。
振り返り
Opus に任せられること
スクリプトにできる反復作業ですね。植生の散布、ショットの生成、点検、エンコード、仕様の文書化。このあたりは本当に任せっきりでした。
人が握っていたこと
デザインと見比べる目、何を見せて何を削るかという演出の判断、そして「これで OK」の判定。つまり監督の仕事です。
制約は大事
いくらAIが優秀でも無限の物量はこなせません。人を出さない、腕を足さない、顔を作らない。そのぶん、各カットの演出にこだわって感情を描くことに集中できます。