Personal Work

ECHO — BlenderMCP と Claude Opusで作るフル3DCG短編

Date 2026.10.28
Class Personal
Categories —
ECHO — BlenderMCP と Claude Opusで作るフル3DCG短編
Cover

制作期間 2026 年 10 月 26 日~ 10 月 30 日
使用ソフト Blender 5.2 / BlenderMCP / Claude Opus 5.5 (エフォート中) / Graswald
尺 約 3 分 (31 カット / 169 秒)

Blender MCP と Claude Opus 5.5、エフォート中だけでフル 3DCG の映像制作を試みました。

デザイン画からメインキャラをモデリングするのはもちろん、リギング、アニメーション、環境デザイン、小物制作、レンダリングのセットアップ、ポスト処理、SE・BGMまで、全部 Opus がやっています。

正直、ここまでできるとは驚きでした。

Opus は Claude のいちばん安いプランでも使えます。つまり、かなり敷居が低く、ほぼ誰でもこれができるということです。

全部 Opus がやっている

モデリングでは、プロポーションが違う!と指示しただけで、人間と同じようにパース絵から輪郭を抽出して View に投影し、プロポーションを合わせてくれました。細部を作るときは拡大してデザイン画と見比べ、影の出方まで参考にしながら形状を詰めてくれました。影のシルエットを元に修正なんてできるのかなと半信半疑でしたが結構やってくれます。

LowPoly でモデリングしてサブディビジョンでなめらかにしますし、人間がやるのと同じように Rig も組みます。そしてその Rig を使ってアニメーションもつけてくれます。

ワクワクするストーリーも提案してくれますし、それを文字コンテに起こすところまでやってくれます。ビデオコンテを見ながら、カメラアングルや主人公の動きに注文をつけることもできます。

ビデオコンテを見ながらあーでもないこーでもないといろんなカメラアングルや動きを試して作っていました。 さながら監督ですね!

後ろ脚の隙間を埋めてリグを仕込むよう依頼し、Claude がテストポーズをレンダーして確認しているところ

アニマティックへのフィードバックと、Claude が問題のフレームを並べて確認しているところ

フィードバックを Claude がタスクに分解して作業を進めているところ

ECHO ってどんな話?

人類が去った後の世界で、四脚の調査ロボット・エコー (ECHO-21) が遺跡に残された人の痕跡を記録していくうちに、記録できない何かを抱えはじめる……という、台詞なしの約 3 分の短編です。

物語は 4 つの感情を順にたどります。

  1. 喜び — 壁の落書きと、残された玩具
  2. 愛情 — 手を重ねた浮彫り
  3. 悲しみ — 墓標と枯れた花
  4. 畏敬 — 観測台と星空

そしてラストで、エコーは「記録ではない絵」を描きます。

エコーのパース絵

エコーの四面図

規模感

項目数
カット31 (+ C30 の別案)
セット5 (門・広間・回廊・墓標・観測台)
生成・制御用の Python スクリプト約 70 本
アニマティックの版v2〜v9 (約 10 時間で 8 回更新)
確認用の静止画約 270 枚
本番レンダー720p・32 サンプルで約 4,200 フレーム、通しでレンダリングして10時間ぐらい?

構想は 10/26、ティーザーとアニマティックは 10/27〜28 計3日ぐらいでしょうか。 合間合間で指示をする感じなので実働はもっと少ないです。

人を出さずに感情を描く

キャラクター制作でいちばん大変なのは、人の顔と芝居です。なので最初に「人間は一切出さない」と決めていました。主人公はロボットというのだけ決めていましたが、感情表現の仕方はOpusに提案してもらったものそのままです。感情は次の 4 つだけで表現します。

腕も足さないし、顔も作りません。制約を先に置いて、そこから物語を逆算して作ってもらった感じです。というと偉そうに聞こえますが、まぁこの辺は自分で作品を作る時も同じですね。不気味の谷を越えるのは大変なので…

文字コンテ(抜粋):感情表現の4要素と第1幕

進め方

#フェーズ主な成果物
1企画ログライン、感情 4 段構成、文字コンテ (31 カット)
2パイプライン設計フォルダ構成 (assets / shots / renders / edit)
3機体モデリング機体のマスターファイル、パーツ一覧
4リグCTRL ボーン + 感情プロパティ
5セット・植生門 / 広間 / 回廊 / 墓標 / 観測台
6ティーザー3 カットの Eevee プレビュー (18 秒)
7全カットのレイアウトC1〜C31、アニマティック v2〜v9
8本番レンダー720p 連番 → mp4
9編集・音これから!

ルールは 3 つだけです。

最初のティーザーは C3・C4・C26 の 3 カットだけ。まず「そもそも絵になるのか?」を確かめます。

ティーザー C4:霧の中で立ち上がるエコー

手で触らない制作

全部スクリプトから作り直せる

モデル、リグ、セット、ショット、HUD、タイトルまで、ほぼすべてが Python スクリプトから作り直せるようになっています。

という具合。フィードバックで脚の関節を変えても、全 31 カットを作り直せばそのまま反映されます。AI との共同作業では、再現できる手順そのものが成果物 なんだなと感じました。

Maya / 3ds Max のやり方を Blender で

ECHO プロジェクトのフォルダ構成

Maya / 3ds MaxBlender
リファレンスリンク (Link)
リファレンスしたリグにアニメライブラリオーバーライド
シーンファイルショットファイル (.blend)

いわゆるちゃんとした?参照ベースのプロジェクト構成になっているのでキャラクターファイルを変更すれば全カットに適用されますし、セットを変更すればこれもまた使われる全カットに反映されます(レンダリングさえし直せば

リファレンス(リンク)の関係

モデリング

放っておくと、形はすぐ球や箱の組み合わせになって、デザイン画から離れていきます。なのでデザイン画 (正面・側面・背面・上面) を部位ごとに拡大して、形に分解して合わせてもらいました。

プロポーションを合わせてと指示しただけで、デザイン画の輪郭を描き込んだテクスチャを用意してカメラ背景に敷き始めたときには、さすがにビビりましたね。

輪郭テクスチャをカメラ背景に敷いた状態

パーツ一覧表なるものが作られて、部位ごとに構成要素 (形・色・素材) と照合した回数が記録されていたようです。たとえば前脚のすねなら「正面は盾形、上端に V 字の切り欠き、青」といった具合に。

パーツ一覧表

LowPoly ケージ方式

パネルラインを別パーツで足すと、形状を直したときについてきません。ベベルのクランプで溝の幅が潰れることもありました。

そこで、曲面上に粗い格子を作り、溝やライトは「線」ではなく「帯」としてナイフで切ってからサブディビジョンをかける方式 に切り替えてもらいました。パネルラインまで含めて 1 枚のメッシュなので、形状を直してもちゃんと追従します。

細部は 3 段階で足しています。

  1. 大きな形
  2. パネル・ライト
  3. ネジ・ベント・ラベル

頭部:最初のモデル → LowPoly ケージ版

ケージ版のレンダーとワイヤー

関節は先に軸を決める

後脚の付け根:Before / After

後脚の足首:Before / After

リグとアニメーション

腕は足していないので、壁を叩く・触れる・描く・玩具をしまうといった芝居は全部前脚でこなしてもらう必要がありますがIKだけでは限界がありました。そこで以下のような工夫をしてもらってます。

デザイン構造上難しい動きは演出で回避します。前脚の先は自分のレンズに届きません。なので C11 は「レンズに触れる」をやめて、「目の前に掲げて見つめる」に演出を変えました。

C11 のレイアウト

絵作り

エコーのルック

目の色

状態色
平常青
喜びオレンジ
悲しみ暗い紫
畏敬白
ラスト (C30)新しい色 (ピンク寄り)

目はじわっと明るくするのではなく、蛍光灯みたいにちらつきながら点く ようにしています。レンズフレアとブルームは強め。C26 では目の変化が画面上で小さく見えたので、さらに強調しました。

C30 新しい色に灯った目

HUD

主観ショットでは HUD を出して、「記録する機械」の目線を見せています。遺跡の柱をスキャンすると「STRUCT ARTIFICIAL / MAT GRANITE / EST.AGE >2,000 Y」と出る、みたいな感じです。モードによって表示も変わって、下の画像は MODE REPAIR で、修理対象が赤い枠で「INTEG 0% / TARGET LOST」と出ています。

エコー視点の HUD。上:柱をスキャン (MODE SURVEY)、下:MODE REPAIR

HUD は別シーンでレンダーして、コンポジットで重ねてもらっています。本編のレンダーにグレアを 6 系統かけて加算し、色調整。そこに HUD をアルファオーバーで重ね、HUD のアルファをぼかしたもので下地を少し暗くして文字を読みやすくしています。最後に HUD のにじみ、樽型歪み+色収差、周辺減光でレンズ越しっぽさを足して完成です。

C19 のコンポジット (ECHO_comp)

セット

セットは門・広間・回廊・墓標・観測台の 5 つ。 各カットのショットファイルには、セット (SET_)、環境 (ENV_) をリンクで読み込み、そこにエコー (CHAR_echo) とカメラ (CAM_) を置いている構成です。アウトライナーを見るとそのまま分かりますね。

門のセット (C3 のショットファイル)

広間のセット (C28 のショットファイル)

霧の濃さもセットごとに 2 案ずつ並べて見比べ、決めていたりします。

霧の比較。セットごとに左右で霧の設定を変えたルックデブ

植生

植生には Graswald を使いました。ただ、Graswald Pro 1.3.16 は Blender 5.2 で動かない模様です (古い文脈オーバーライド API を使っているため)。なのでモデルとマテリアルだけ借りて、散布は自作の Geometry Nodes で組んでもらってます。

門のセット v1 → v5

植生に埋もれた門の遺跡

レイアウトからアニマティックへ

全カットを粗く通してから詰める方針で、アニマティックは v2 から v9 まで、約 10 時間で 8 回更新していたようです。そのままだと演出上の意図が分かりづらい部分も何カットかあり、全然別演出になったものもあります。

C4 Workbench と Eevee の比較

アニマティックの変遷

レンダリング — Mac では無理なので Windows 機に任せる

1080p の Cycles だと、門のセットで 1 枚数分かかる見込みでした。1080p と 720p を見比べたら差が小さかったので、720p・32 サンプル・OIDN (アルベド + 法線) でいくことに。

セット1 枚あたり (RTX 4060 Ti)
植生の多いセット約 13 秒
夜の観測台約 5 秒

作業は Mac で、本番レンダーは別の Windows 機でバックグラウンド実行です。受け渡しは GitHub 経由で行っています。

Tips

Blender / パイプライン

AI との協働

振り返り

Opus に任せられること
スクリプトにできる反復作業ですね。植生の散布、ショットの生成、点検、エンコード、仕様の文書化。このあたりは本当に任せっきりでした。

人が握っていたこと
デザインと見比べる目、何を見せて何を削るかという演出の判断、そして「これで OK」の判定。つまり監督の仕事です。

制約は大事
いくらAIが優秀でも無限の物量はこなせません。人を出さない、腕を足さない、顔を作らない。そのぶん、各カットの演出にこだわって感情を描くことに集中できます。

VFX Breakdown

← Personal Index Blog →